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韓国でのセミナー講師を通じて感じた韓国の計量事情-その1-執筆 横田俊英

韓国の計量団体であるKASTOのセミナーでの質疑で分かった韓国の計量事業

韓国ではハカリの定期検査料金は徴収していない

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韓国でのセミナー講師を通じて感じた韓国の計量事情-その1-執筆 横田俊英

(はじめに 韓国での計量せミナーのこと)

 韓国の計量団体であるKASTO(Korea Association of Standards and Testing Organizations)が主催する年間行事の一つとしてのセミナーで日本の計量事情を説明をするようにという要請があったので2時間30分ほどの持ち時間でこの役目を担った。セミナーの講師は一人だけであるのでその場に間違いなくいることに努めた。ソウル市の中心街の中小企業会館で2017年5月25日午後に開かれたセミナー会場には70名ほどが集まっていて、前日に顔を合わせた国家公務員もいた。


KASTO(Korea Association of Standards and Testing Organizations)
を訪問する。KASTOが一括入居するビルの前で記念撮影。
左はA&D韓国の専務、左から二人目が筆者。

(参加者は70名ほどいたようにみえた)

 多くは韓国の各種の計量器製造事業者であり卸販売事業者や地場性の強い小規模のハカリ事業者も10社ほどがあった。日本のガソリン計量器製造会社の韓国駐在の人がいたり、日本市場にハカリや体重計などを供給する韓国の有名企業も参加していた。韓国の電力量計会社やガスメーター製造事業者も参加していて事前に質問がだされていた。KASTOの日本名の訳はあえて表記しない。

(韓国にはエー・アンド・デイ韓国の新工場を10数年前に訪れたきり)

当方は韓国にはエー・アンド・デイ韓国の新工場を10数年前に訪れたことがあるだけだ。だから韓国の計量事情は知らない。知っているのは韓国にもう一つ有名なハカリ企業があって日本に製品を入れていることだけである。ほかのことは知らない。普段は韓国の計量事情のことを考えない。依頼を受けて日本の計量計測産業と計量行政そして計量法の事情を知る範囲で説明する。それだけのことと考え説明の準備をした。

(日本語がよくわかる韓国計量器企業幹部が通訳についた)

 英語で話す力はな。韓国語は知らない。図と数字によって説明することにした。図の説明に漢字を多く混ぜれば通じるだろうと判断して準備をした。漢字は理解されないことがわかった。片言の通訳がつくということであった。通訳を担当した人とセミナーの前日にKATS(Korean Agency for Technology and Standards)などを視察して一日行動を共にした。韓国の有力企業で計量器の開発の仕事をしているこの人は日本語も韓国語も英語もよくできる優秀な人であった。

(一日を視察旅行で共に過ごしたことでセミナーの関心事を確認する)

 一日行動を共にしたことで私の日本語の言い回しが分かったという。セミナーで話す内容の文章をは渡してあった。視察の合間にその内容のやりとりをしていた。通訳からは韓国の計量関係者の関心事が私が想定していたことと違うことをつたえれた。そのために説明の内容をその方向に変えた。内容変更のために夜にホテルから一歩もでないで資料を集め文書をつくった。早くにソウルに出かけたので説明までの二日間は有効であった。

(説明に窮したら事前に話した日本の計量面白話をしてくれと頼んでおく)

 通訳という言い方をしているが韓国の有力企業の幹部社員である。この人とのセミナー前日の一緒の行動は有益であった。視察の合間に日韓の計量事業や社会事情の交換をした。日本の企業の実情などを伝えて計量器産業の行く末を考えることもしていた。そのような交流があったので私が説明に窮することがあったら、移動の車の中で話いたことなどを織り交ぜて時間を費やすことを頼んであった。伝えた面白事情は沢山ある。20分や30分、いや1時間は埋めることができる。硬い話よりも車に同乗していたほかの人もこの方面に興味を示していた。

(韓国は有名大学をでて財閥企業に就職することが幸せにつながる)

 韓国の財閥のことが話題になる。日本の財閥は一時解体されたので現在の韓国の財閥とは内容が違うことを説明した。韓国では名のとおった大学をでて財閥系企業に入社することが人生の成功だと考えている。日本でも似たようなことがあるが日本の大卒女子は食品や菓子や身の回り品を商品にする企業に入るたがるし男子も似ている。幹部社員として身分が何となく保証されている一流大学卒業者以外は消耗品の社畜になり離職率は高い。日本の大卒者の就職率の高さが話題になっているが内容は大したことはない。満足しない就職とい日本の事情がある。このようなことを話した。

(質疑応答は白熱気味であった)

 韓国の有力な計測企業の幹部社員が通訳をつとめるのであるから心配はいらない。私の社会観と計量計測産業や計量行政についての考え方を感じ取ってもらっているから、そのニュアンスで韓国語を使う。セミナーの前半の日本の計量器産業の現状の説明など大した関心事ではないという雰囲気だったので早めに切り上げた。それでも質問が相次いだ。質疑応答のほうが気が楽である。韓国の役所を批判するような説明に答えないでいたら、そのことを問い返された。答えられる訳がない。そのことは後で述べる。

(優秀な通訳によって成立した日本語での説明)

 日本でお話しすることであれば日本語の言い回しで細かなことまで触れることができる。とは言っても私の話は人を笑わせたり面白がらせるということで時間をつぶすようにはできていない。通訳を介して韓国語で説明するとなると大まかになってしまう。大まかさに聞き手が苛立つことだろうから質問を受けて答える時間を増やした。私が答えるが韓国語にするのは優秀な通訳である。私の至らぬ説明や質問へのぶっきらぼうな回答を、韓国語で穏やかにして適切に説明するのだから大いに助かった。

(パソコンの内容を表示するためのHDMIケーブルが会場にない、困った)

 以上のようなことで状況が理解できよう。優秀な通訳がいて前日によく話してあり、また説明の図と数値表と説明文をパソコンからそのまま表示できるとなれば何も心配はない。それでもパソコンの内容を表示するためのHDMIケーブルが会場にないためにこれを取り寄せて装着したのが説明の途中であっらからそれまでは落ち着かなかった。

(メーカー自己検定の実情への矢継ぎ早な質問がつづく)

 2時間30分の持ち時間のうち質問を受ける時間を多くとったところ、質問は矢継ぎ早であり、日本の計量器事業者の規模などを聞かれ、またメーカー自己検定の指定製造事業者制度や検定の料金制度などへの質問があった。

(質疑から読み取られた韓国の計量法と計量行政の実情)

 質問などを通じて韓国の計量法と計量行政の実情として次のようなことがあるように判断された。

1、韓国の計量法には指定製造事業者制度が組み込まれているものの現実には制度を動かしてはいない。

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1、日本の指定製造事業者制度は法が規定したとおりに動かされているのか、という質問があった。

1、これに対しては次のように答えた。

a、2004年の計量法の改正は指定製造事業者制度や指定定期検査機関制度を導入して動かすためのものであり、そのことの推進はあってもあえて傷害をつくりだすようなことはしていない。

b、この制度の良い悪いの評価はいろいろあるかもしれないが法改正の目的がこの制度を機能させるためにあったので、その趣旨にそって計量行政は機能し、指定製造事業者制度と指定定期検査機関制度の指定を受けて業務をしているメーカーと事業所は多い。

c、血圧計と体温計のほとんどは指定製造事業者制度によるメーカー自己検定によって製品がつくられて市場に出されている。電力量計、ガスメーター、水道メーター、タクシーメーター、ガソリン計量器、ハカリなど多くの大量生産型の特定計量器(検定対象器種)のほとんどがこの制度を利用している。

d、ハカリの定期検査を実施する民間委託の制度としての指定定期検査機関は多くの地方公共団体が指定をして、実際に委託をしている。

e、ハカリの定期検査の有料性の可否の問いがあって、次のように答えた、昭和41年までは無料であったのが昭和42年から有料になった。小さなハカリでは1000円程度の定期検査料金である。計量士による有料制の代検査が平行して行われている。適正計量管理事業所制度があって計量士が検査したのに相当する管理を行うことによって、この事業所では役所やその代行の機関による定期検査を受けることが免除されている。

f、日本における電力量計の自動検針と自動課金システムとしてのスマートメーターは供給が始まっているのか。この質問には次のように答えた。各電力会社は物凄い勢いで電力量計のスマートメーターに切り替えている。やがて電力量計はすべてがスマートメーターになる。この制度ができるまえにも工場などの事業所ではスマートメーターが取り付けられていた。ガスメーターでも少しではあるがスマートメーターが実験として取り付けられている。

g、韓国の計量器の型式承認などを審査する機関の審査内容は事業者には厳しすぎることを伝える発言があった。関連の事項への感想を問われたが「私は日本の事情を説明することだけを任としてこの場にいる」と答えたが、優秀な通訳がどのように伝えたかは知らない。

h、韓国の電力量計の製造事業者が日本の製品を販売するための条件はどうであるか。という質問があった。電力量計を買うのは電力会社であるから売買の慣習があるから困難度が高いと答えた。すると質問の意図は電力会社にではなく事業所への販売を狙っている、ということであったが意図が理解できなかった。

i、ほか。

 セミナーの概要は上の通りである。

 セミナーのために準備し作成した文書と図表と韓国での視察などの内容は別項で取り扱う。韓国訪問を機会に日本や韓国や世界のことについて考えたことも別の項目で述べる。

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